過払い金 判例集 その1
第1 請求
被告は,原告に対し,118万6981円及び内金110万3649円に対する平成14年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が被告との消費貸借契約に基づき弁済した元利金のうち,利息制限法に定める制限利率を超える利息を順次元本に充当して計算をした結果によって生じた過払分の不当利得及びこれに対する各過払い金発生日から民法所定年5分の割合による利息(民法704条の悪意の受益者に対する請求)を請求した事案である。
1 争いのない事実等(証拠等によって認定した事実は末尾に当該証拠等を掲記する。)
(1) 被告は,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)による登録を受けた貸金業者である。
(2) 被告は,原告に対し,平成4年6月8日から別紙計算書1の年月日欄記載の日に同借入金額欄記載のとおり金員を貸し付け,原告は,同計算書1の年月日欄記載の日に同弁済額欄記載のとおり上記貸付けに対する弁済をした。
(3) 被告が原告に対して行う貸付け及び原告からの弁済の受入れは,被告の設置する現金自動貸付返済機(ATM,以下「ATM」という。)によって行われる場合があった。
(4) 上記ATM取引による利息弁済につき,平成9年4月以前は,被告は,借主が一定の金員をATMに収納した後に「ATMご利用明細書(領収書)」と題する貸金業法18条及び同法施行規則15条に定める記載事項を記入した書面(以下「18条書面」という。)を借主に交付する取扱いをしていた。
(5) このような取扱いについては,平成9年2月21日の東京地裁判決(判例タイムズ953号280ページ)において,弁済前に債務者が弁済額が具体的にどのように利息,元本等に充当されるのか認識できないことを理由に貸金業法43条1項による「みなし弁済」(以下「みなし弁済」という。)の適用を否定された。
上記判決の控訴審においても,東京高裁は,平成9年11月17日の判決(判例タイムズ1005号78ページ)でその結論を維持した。
被告は,これに対して上告をせず,上記判決は確定した。
(6) 上記の東京地裁判決が出された後の平成9年4月28日ころから同年5月31日ころにかけて被告は,自社ATMにつき,借主が弁済のために入金する場合の操作画面を一斉に一部変更し,取引内容確認・選択画面を追加した。
これによると,借主が一定の金員をATMに投入すると,取引内容,すなわち,投入金額,返済金額,利息・遅延利息・元金への各充当金額などが表示されると同時に画面に「確認」と「手続取消」の二つの選択ボタンが表れ,借主は,画面上の上記表示を確認した上で「確認」ボタンを押して先に進んで弁済を確定するか,あるいは,「手続取消」ボタンを押して引き返して投入現金を取り戻すかを選択することとなった。
そして前記の「ATMご利用明細書(領収書)」は,上記確認ボタンを押した借主に対し,ATMから出てくる仕組みとなった。
(7) また,被告は,原告から銀行振込による弁済も受けていた。貸金業者が借主から銀行振込による弁済を受けた場合にみなし弁済の適用を受けるためには18条書面の作成,交付が必要であるか否かという問題につき,大阪高裁は,平成元年3月14日に,銀行振込による弁済の場合でも18条書面の交付は必要であるとの判決をしたほか(判例タイムズ705号175ページ),多数の下級審判決が同様の判断を示していた。最高裁も平成11年1月21日に同様の判決をした(判例時報1667号68ページ)。
(8) しかしながら被告は今日に至るも銀行振込による弁済を受けた場合に18条書面の作成,交付をしておらず,本件における被告との取引においても同様であった。
2 争点
(1) 原告の被告に対する利息の弁済にみなし弁済の適用があるか。
(被告の主張)
ア 貸金業法17条及び同法施行規則13条に定める事項を記載した書面(以下「17条書面」という。)の交付
被告は,原告と当初包括契約を締結して限度額を定めて貸付取引を開始し,その後,限度額を変更する都度,包括契約を更新した。
被告は,上記包括契約の締結若しくは更新の都度,原告に対し,包括契約書面として平成5年6月末までは「限度額融資契約証書」若しくは「リボルビング限度額契約証書」を,平成5年7月以降は「カードローン契約証書」を交付した。
さらに,被告は,原告に対し,上記包括契約に基づき店頭取引により金員を貸し付ける場合は個別契約書面として「領収証兼残高確認書」若しくは「領収証兼ご利用明細書」を交付し,ATM取引によって金員を貸し付ける場合は個別契約書面として「ATMご利用明細書(領収証)」を交付した。
上記の各書面は,両者相まって17条書面として求められている記載事項を網羅している。
イ 約定利息の任意の弁済
原告は,被告に対し,別紙計算書1の年月日欄記載の日に同弁済額欄記載のとおり上記貸付けに対する弁済をするに当たり約定利息を指定してこれを任意に支払った。
ウ 18条書面の交付
被告は,原告から店頭取引により弁済を受けた場合は,直ちに原告に対し,貸金業法18条及び同法施行規則15条に定める事項を記載した「領収証兼残高証明書」若しくは「領収証兼ご利用明細書」を交付していた。
また,被告は,原告からATM取引により弁済を受けた場合は,直ちに原告に対し,貸金業法18条及び同法施行規則15条に定める事項を記載した「ATMご利用明細書(領収証)」を交
付した。
(原告の主張)
ア 17条書面の交付については否認する。上記書面の交付については何ら立証されていない。
イ 18条書面の交付についても否認する。上記書面の交付については何ら立証されていない。
また,実際には,原告の被告に対する弁済は,店頭取引,ATM取引による場合のほかに,銀行振込によって行われる場合があった。
銀行振込による場合も18条書面の作成,交付が必要であるが,被告は,銀行振込による弁済の場合,一切,受取証書を発行していない。
ウ なお,被告は,前記第2,1(5)及び(6)のとおり平成9年4月28日から同年5月31日の間に被告の設置するATMの仕様を変更した。
これは,平成9年2月21日に言い渡された東京地裁の判決において,ATM取引による弁済において債務者が弁済をする前に元本,利息の充当関係を認識できないときは,貸金業法18条1項の要件を満たさないとの判断が示されたことを受けてのことであった。
したがって,このATMの仕様変更の時点で被告は,原告のATMによる弁済についてはみなし弁済の適用を受けられないことを認識していた。
しかしながら,同年6月以降の原告によるATMを利用した弁済の後に交付された「ATMご利用明細書(領収証)」には,平成9年5月以前の取引について利息制限法による引き直し計算をして超過利息を元本に充当した後の元本残高ではなく,約定どおりの利息返済に充当した結果の元本残高しか記載されていなかった。
エ これは実体と明らかにかけ離れた不正確な内容であり,被告が原告に交付した「ATMご利用明細書(領収証)」は,この点においても18条書面の要件を満たさない。
オ 前記第2,1(2)記載の各年月日における被告と原告の貸付け若しくは弁済の取引にみなし弁済の適用がないことを前提に計算をすると,別紙計算書1のとおり110万3649円の過払い金を生じる結果となる。原告は,被告に対し,上記過払い金につき不当利得返還請求権を有している。
(2) 被告は,原告の利息制限法による制限利率を超える利息弁済によって生じた不当利得につき悪意の受益者といえるか。
(原告の主張)
ア 被告は,利息制限法所定の利率を超える利息の弁済を原告から受けていたことを認識していた。
被告がこれに対してみなし弁済の適用があると認識していたとの主張には以下のとおり合理的根拠がない。
したがって,被告は,悪意の受益者に該当する。
イ 被告の設置するATMによる利息弁済については,前記第2,1(5)及び(6)のとおり,平成9年2月21日の東京地裁判決及び平成9年11月17日の東京高裁判決において,みなし弁済の適用を否定されたことをきっかけに,ATMの仕様変更がなされた。
しかし,被告は,上記仕様変更以前の取引がみなし弁済の要件を満たさないことを知りつつ,原告のATMの仕様変更以前の取引に対して利息制限法に従った利息引き直し計算をせず,受取証書に従前の元本をそのまま記載していた。
このような実体関係とかけ離れた内容を記載した受取証書は貸金業法18条1項の適用を受けられないと考えられるところ,これについて被告は悪意であった。
ウ また,被告は,前記第2,1(7)及び(8)のとおり,下級審や最高裁において,銀行振込による弁済の場合に18条書面の作成,交付をしないとみなし弁済の適用を受けられないとの判決が出されていたにもかかわらず,今日に至るまで銀行振込による弁済があった場合に受取証書を発行しない扱いを維持してきた。
本件においても被告は,原告に対し,銀行振込による弁済があった場合に受取証書を交付していない。
したがって,被告は,銀行振込による弁済にみなし弁済が適用されないことについても悪意であった。
(被告の主張)
ア 被告が利息制限法所定の利率を超える利息の弁済を原告から受けていたことを認識していたことは認めるが,同時に被告は,原告との取引にみなし弁済の適用があり,不当利得が発生しないと相当の根拠をもって信じていたのであり,不当利得の発生につき悪意とはいえない。
イ 最判平成2年1月22日(民集44巻2号369ページ)が,「債務者が契約所定の利息・損害金の支払に充当されることを認識した上,自己の自由な意思によってこれらの額を支払」えば,貸金業法43条1項の「利息・損害金の支払の任意性」の要件は満たされ,「債務者において,その支払った金銭の額が利息制限法所定の制限額を超えていることまで認識していることを要しない。」と判示したことから,被告は,借主において,弁済が約定の利息,損害金の支払に充当されていることを認識さえしていれば貸金業法43条1項の上記要件は満たされ,借主が弁済をするに当たって利息,損害金が具体的に幾らであるかまで認識している必要はないと理解していた。
これは上記判例に関する当時の解説,論評の内容に照らしても正当な認識である。
前記第2,1(4)の被告のATMの仕様変更前の弁済の受入れは,上記見解に沿ったものであり,被告は,これによってみなし弁済の適用を受けられると信じていたし,上記認識には相当な根拠があった。
ウ 被告が原告の主張するようにATMの仕様を変更した事実は認めるが,これは前記東京地裁判決が出たことによりATMの旧画面による弁済が利息・損害金としての支払とは認められないと考えたからではなく,前記の平成2年最高裁判決によれば,旧画面による弁済も利息・損害金としての支払と認められると確信していたが,顧客にとってよりわかりやすい画面にするとの観点から実施したものにすぎない。
エ 銀行振込による弁済の場合に受取証書の作成,交付を要するとした前記最高裁判決は,特段の事情がある場合には受取証書の交付がなくともみなし弁済の適用を受けられることを認めており,いまだ特段の事情の内容については明らかになっていない。借主が銀行振込による返済の場合にあらかじめ受取証書の交付を拒絶している場合には貸金業者は受取証書の送付をする必要はないとの見解も主張されており,現に原告と被告との包括契約書面にはその旨が記載されている。
オ また,個別事件の裁判において法的評価の面からみなし弁済成立の要件の欠如が指摘されたからといって,被告がその時点から過払い金の発生について直ちに悪意になるというものでもない。
カ 前記第2,2(2)(原告の主張)イの事実は認めるが,貸金業法が受取証書を18条書面と認めるための要件として利息制限法所定の利息による引き直し計算の結果を受取証書に記載することまで求めているとはいえない。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(原告の被告に対する利息弁済にみなし弁済の適用があるか。)について
(1) 証拠(乙B2の1ないし10,3の1及び2,4の1ないし4,6の1ないし3,7の1及び2,9,10の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,原告に対し,平成4年6月8日,貸付けについての包括契約書面として契約限度額を50万円とするリボルビング限度額契約証書を作成,交付したこと,平成7年5月31日,契約限度額を100万円と変更するに当たって改めてカードローン契約証書兼告知書を作成,交付したこと,上記包括契約に基づき店頭取引により金員を貸し付ける場合は個別契約書面として「領収証兼残高確認書」若しくは「領収証兼ご利用明細書」を交付し,ATM取引によって金員を貸し付ける場合は個別契約書面として「ATMご利用明細書(領収証)」を交付する扱いとしていたこと,上記貸付に対する原告の弁済は,被告の設置するATM若しくは銀行送金によって行われたこと,被告は,ATM取引により弁済を受けた場合は,直ちにATMにより排出される「ATMご利用明細書(領収証)」を交付する扱いとしていたことが認められる。
しかし,原告と被告との間の個別の各取引についていかなる書面が交付されたかにつき,被告は,上記包括契約書面を除き一般的な書式を書証として提出するにとどまっているのであり,これをもってみなし弁済適用の前提たる17条書面,18条書面の交付について立証が尽くされたとはいえない。
(2) したがって,その余の点につき判断するまでもなく,原告による利息の弁済についてはみなし弁済を適用することはできない。
2 争点(2)(被告は,原告の利息制限法による制限利率を超える利息弁済によって生じた不当利得につき悪意の受益者といえるか。)について
(1) 証拠(乙B9)及び弁論の全趣旨によれば,原告の被告に対する各弁済は,別紙計算書2の弁済額欄の区分に記載したとおり,被告の設置するATMによって行われたものと振込送金によって行われたものがあることが認められる。
(2) 被告の設置するATM取引の画面表示等の仕組みの変更は,平成9年2月21日の東京地裁判決の直後になされていたこと(前記第2,1(5)及び(6)),上記判決は,債務者において弁済前に弁済額が具体的にどのように利息,元本等に充当されるのか認識できないことを理由にみなし弁済の適用を否定したというものであったところ,被告は,同(6)記載のように,前記判決で指摘された点について,ATMの仕様を変更してこれを改善する措置をとったことからすれば,上記変更は,上記判決によってみなし弁済の適用が否定されたことを受けて,被告の設置するATMによる取引がみなし弁済の適用を受けられるようにするために行われたものと認められる。
そして,上記東京地裁判決の控訴審においても平成9年11月17日,上記結論を維持する判決が出され,被告がこれに対して上告をせず,上記判決が確定したこと(同(5))などからみて,被告は,遅くとも上記判決確定の時点では,上記の仕様変更前のATM取引につきみなし弁済の適用が否定される可能性が高いことを認識するに至ったと認めるのが相当である。
(3) しかし,同時に前記のとおり東京地裁判決で指摘された問題点に対応するATMの仕様変更を行ったからには,その後においては,被告において,上記東京地裁判決と同様の理由によりみなし弁済の適用を否定されることはなくなったと認識していたと認めるのが相当である。
(4) 原告は,上記の時点の前後にわたり被告との取引を行っているが(前記第2,1(2)),被告は,原告に対し,ATMの仕様変更以前の取引につき利息制限法所定利息による引き直し計算をした結果の元本残高ではなく,約定利息に従った充当をした元本残高を記載していた(争いのない事実)。
このように実体関係と離れた記載をした契約書若しくは受取証書を借主に交付することによってみなし弁済の適用を受けられるかについては,見解が分かれており,貸金業法18条の趣旨が債務者に充当計算の手掛かりを与えることにあることを理由として,受取証書に実体的に正確な充当関係を記載することまでは貸金業法は要求していないとする見解も有力であった(法曹会「貸金業関係事件執務資料」89ページ)。
したがって,被告が上記の措置をとらなかったことをもって直ちにみなし弁済の適用を受けられないことにつき悪意であったとは言い難い。
(5) 以上によれば,被告は,ATMの仕様変更の時点で,それ以前の取引にみなし弁済の適用が否定される可能性が高いことを認識したと認められるが,仕様変更後の取引には被告の設置するATMの仕組み自体に内在する問題点により一般的にみなし弁済の適用が否定されることはなくなったと認識していたと認めるのが相当である。
(6) 次に,銀行振込の方法による弁済について検討するに,被告は,前記第2,1(7)及び(8)のとおり,下級審や最高裁において,銀行振込による弁済の場合に18条書面の作成,交付をしないとみなし弁済の適用を受けられないとの判決が出されていたにもかかわらず,今日に至るまで銀行振込による弁済があった場合に受取証書を発行しない扱いを維持してきたのであり,本件においても被告は,原告に対し,銀行振込による弁済があった場合に受取証書を交付していない。
したがって,被告は,遅くとも上記最高裁判決が出された平成11年1月21日の時点では被告の取引において銀行振込による弁済を受けた場合にはみなし弁済が適用されないと認識したと認めるのが相当である。これに対し,被告は,最高裁判決が,特段の事情がある場合には受取証
書の交付がなくともみなし弁済の適用を受けられることを認めていたこと,借主が銀行振込による返済の場合にあらかじめ受取証書の交付を拒絶している場合には貸金業者は受取証書の送付をする必要はないとの見解も主張されていたこと,現に原告と被告との包括契約書面にはその旨が記載されていることなどから,なお,被告の取引において銀行振込による弁済を受けた場合に受取証書を作成,交付しなくてもいいと相当の根拠をもって信じていたと主張している。
被告の上記主張に沿う証拠として,原告と被告との間の包括契約書面(乙B10の1,2)には,印刷された不動文字で「送金(銀行振込等)による支払いについては,領収証の送付を必要としません。ただし,私が申し出をした場合には交付されるものとします。」との記載(契約条項第3項)があることが認められる。
しかしながら,仮に上記最高裁判決のいう特段の事情として債務者があらかじめ銀行振込による弁済において受取証書の送付は不要と申し出た場合を想定するとしても,これは債務者がその意味を理解し,真意から申し出たことを要すると解されるところ,被告において原告に対し,上記条項の意義について原告に理解可能なように説明をしたという事実については,本件全証拠によるもこれを認めるに足りず,また,被告が各債務者に対し,上記条項の内容について真意を確認する体制をとっていたと認めるに足りる証拠も存在しない。
以上によれば,単に上記条項が存在するということのみをもって原告と被告との取引における銀行振込による弁済についてみなし弁済の適用が認められないことはもちろん,被告がみなし弁済
の適用を信じていたとの主張も理由がない。
(7) そこで,以上の認定を前提に本件において被告が悪意の受益者となるか,なるとすればどの時点からであるかについて検討する。
原告については,別紙計算書1のとおり,前記ATMの仕様変更が完了した平成9年5月末日の時点ではそれ以前の取引に利息制限法所定利息による引き直し計算をしたとしてもいまだ過払い金を生じていない。
前記(5)のとおり,被告は,この時点で,それ以後のATM取引による弁済にはみなし弁済の適用を受けられると認識していたが,原告は,ATMによる弁済と銀行振込による弁済を併用していたため,銀行振込による弁済についてみなし弁済の適用を否定すると,たとえATMによる弁済について被告の認識に従って,ATMの仕様変更前にはみなし弁済の適用がなく,その後はみなし弁済の適用があるという前提で計算をしたとしても,別紙計算書2のとおり,被告が平成11年4月27日の弁済を受けた時点で原告に過払い金が生じる。この時点においては,前記のとおり,被告は,既にATMの仕様変更以前のATMによる弁済及び銀行振込による弁済についてはみなし弁済の適用が否定される可能性が高いことを認識したというべきであるから,被告は上記の過払い金の発生について認識することは可能であったと考えられる。また,それ以後の取引については,もはやみなし弁済の適用の余地はないのであるから,それ以後の原告の各弁済による過払い金の発生についても被告は認識することができたと考えられる。
以上によれば,被告は,原告との取引につき,平成11年4月27日以降は悪意の受益者であったと認めるのが相当である。
(8) 原告につき,前記の認定に従って,利息制限法所定の利息による引き直し計算及びこれによって生じる過払い金についての利息計算をすると,別紙計算書3のとおりとなる。
したがって,原告は,被告に対し,過払い金110万3276円に被告が悪意となったと認められる平成11年4月27日の翌日である同月28日から最後の弁済日(過払い金発生の日)である平成14年8月28日までの民事所定の年5分の割合による未精算利息8万3291円を加えた118万6567円及び上記過払い金に対する最後の過払い金発生の日の翌日である平成14年8月29日から支払済みまで民法所定の年5分による利息の請求をすることができる。
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過払い金 判例集 その2
第1 請求
1 被告は,原告Aに対し,金168万4100円及び内金150万3357円に対する平成13年11月10日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告は,原告Bに対し,金36万6951円及び内金35万9234円に対する平成14年2月26日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は,消費者金融会社である被告から金員を借り入れた原告らが,被告との一連の取引により,利息制限法所定の制限利率に基づく利息(以下「制限利息」という。)を超える約定利息を支払った結果,過払い金が生じており,かつ,被告が過払い金の取得について民法704条所定の「悪意の受益者」に当たるとして,過払い金及びこれに対する各過払い金発生日から支払済みまで年5%の割合による利息が発生していることを前提とした計算による過払い金の返還を求めている事案である。
被告は,貸金業法の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)43条のみなし弁済規定の適用がある旨の主張をする反面でその立証をせず,過払い金が発生していることは認めているものの,被告が民法704条の「悪意の受益者」であり,年5%の利息が発生するとの点を争っている。
2 前提事実
(1) 原告A
被告は,原告Aに対し,別紙1の年月日欄記載の日に,借入金額欄の貸付けを行い,原告Aは,これに対して弁済額欄記載の返済をした。
(2) 原告B
被告は,原告Bに対し,別紙2の年月日欄記載の日に,借入金額欄の貸付けを行い,原告Bは,これに対して弁済額欄記載の返済をした。
3 争点
被告は民法704条所定の「悪意の受益者」に当たるか
4 争点に関する原告の主張
(1) 原告ら
ア 「悪意の受益者」に関する主要事実について
一般に,不当利得者が,その利得にかかる法律上の原因の不存在を基礎づける事実を認識している場合には,当然に「悪意の受益者」となるのであって,法令の存在を知らなかったり,誤った法解釈に基づいて法律上の原因があるものと誤解していたとしても,そのことは結論に影響を及ぼさない(「法の不知は恕さず」)。
すなわち,「悪意の受益者」か否かは,不当利得者が認識していた法律上の原因の存否を基礎づける具体的な事実の内容如何によって定まるのであり,法的評価についての認識とは無関係である。
イ 「悪意の受益者」に関する主張立証責任について
(ア) 一般に,法律上の原因なく受益した者は,その利得について法律上の原因がないことについて悪意であるのが通常であるから,不当利得者が法律上の原因がないことについて善意であることを主張立証しない限り,「悪意の受益者」であることを免れず,取得した利得に利息を付して返還する義務を負う。
(イ) 貸金業法43条所定のみなし弁済の規定は,利息制限法1条の例外規定であり,その全ての要件事実の立証責任は貸金業者が負担することが明らかであるが,それにもかかわらず,貸金業者の主観についての主張立証責任を借主に負担させるのは著しく不合理である。
したがって,法律上の原因があることの認識,すなわち,みなし弁済が成立すると認識していたことは抗弁事実と捉えられるべきであり,その主張立証責任は貸金業者たる被告側が負担すべきものである。
ウ 被告が「悪意の受益者」であることについて
被告は,貸付けをした際には概ね契約書面を発行しているが,これが貸金業法17条所定事項を記載した書面(以下「17条書面」という。)に該るか否かは不明であり,原告らにこれを立証する手段はない。
また,被告は,銀行振込による返済を受けたときは受取証書を発行しておらず,店頭またはATMを利用した返済の際には概ね受取証書を発行しているものの,その書面の記載はおよそ実体とかけ離れており,同法18条所定事項を記載した書面(以下「18条書面」という。)には該らない。
以上のとおり,被告は,制限利息を超える約定利息を収受することについて悪意であり,かつ,みなし弁済が成立すると信じることについて相当の理由もなかったのであるから,「悪意の受益者」となる。
(2) 被告
ア 「悪意の受益者」に関する主要事実について
一般に,客観的には利得に法律上の原因が認められない場合であっても,不当利得者がその利得に法律上の原因があると認識している場合には,「悪意の受益者」には該らない。
すなわち,不当利得において,利得に客観的に法律上の原因があると認められるか否かという問題と,主観的に「悪意の受益者」であるか否かという問題の間には論理必然の関係はない。
イ 「悪意の受益者」に関する主張立証責任について
悪意の受益者に対する利息付不当利得返還請求権は,通常の不当利得返還請求権の成立要件に加えて,特に「悪意」が必要とされるのであるから,これを請求する原告の側で,「悪意であること」の主張立証責任を負担することは当然である。
ウ 被告が「悪意の受益者」ではないことについて
被告は,17条書面,18条書面を作成し,原告らに交付しているから,貸金業法43条のみなし弁済規定の適用を受け得るのであり,現在もかかる認識を有しているのであって,「悪意の受益者」には該らない。
なお,被告が本件においてみなし弁済規定の適用を主張しないのは,現時点においてこれを正確に立証するための証拠を揃えることが困難であるからにすぎない。
エ 認識の主体について
一般に,ある事実に関する知・不知等の主観的態様が法人に関して問題となる場合は,当該法人の代表者の認識が問題とされる。
本件において,被告の機関たる地位にある者は原告らについての個別に取引態様を認識していたわけではないから,被告が「悪意の受益者」に当たることはない。
第3 争点に対する判断
1 「悪意の受益者」に関する主張立証責任について
一般に,民法704条所定の「悪意の受益者」とは,受益者において利得に法律上の原因がないことを認識していることをいうものと解されるところ,この点に関する主張立証責任については,考え方が分かれている。
そこで,以下,金銭消費貸借契約の借主が貸主に対して制限利息を超える約定利息を支払ったことを原因として不当利得の返還をし,併せて貸主が704条の「悪意の受益者」に該るとしてこれに対する利息の支払を求める場合における主張立証責任の分配について検討することとする。
(1) いわゆる給付利得に関する「法律上の原因のないこと」の主張立証責任
まず,前提として,いわゆる給付利得に関する不当利得返還請求権それ自体に関する主張立証責任の分配について考える。
ア 一般に,いわゆる給付利得に関する不当利得返還請求権の要件事実の一つである「法律上の原因がないこと」は,原告において主張立証すべき請求原因事実であると解される(最高裁第二小法廷昭和59年12月21日判決・裁判集民事143号503頁参照)。
イ ところで,いわゆる給付利得に関する「法律上の原因がないこと」の主張立証は,およそあらゆる法律上の原因がないことを網羅的に主張立証しなければならないものではなく,給付の原因となった法律関係に関する無効,取消又は解除等の原因となる具体的事実(例えば法律行為の要素に錯誤があることなど)を主張立証すれば足りるものと解するのが相当である。
また,その際には,これらの無効事由,取消事由又は解除事由と併存しつつ,無効,取消又は解除の法律効果の発生を障害する事実(例えば錯誤無効が主張された場合の重過失など)の不存在まで主張立証しなければならないものではなく,これらについては,被告の側でかかる事実の存在を主張立証すべき抗弁となるものと解するのが相当である。
(2) 金銭消費貸借の借主から貸主に対して制限利息を超える約定利息を支払ったことを原因とする不当利得返還請求における「法律上の原因のないこと」の主張立証責任
そこで,金銭消費貸借契約において借主が貸主に対して制限利息を超える約定利息を支払ったことを原因とする不当利得返還請求権について検討する。
まず,給付の原因たるべき法律関係は金銭消費貸借契約における約定利息に関する合意であることは明らかであるところ,利息制限法1条は,制限利息を超える約定利息の定めを無効と規定し,貸金業法43条は,みなし弁済規定の要件を充足した場合に例外的にこれに基づく支払いを有効な利息の債務の弁済とみなすと規定しているから,文理解釈に従えば,制限利息を超える約定利息の収受は,みなし弁済規定の要件を充足しない限り,法律上の原因がないことが明らかである。
かかる実体法規の文言や形式は,この点の主張立証責任を考えるに当たって十分尊重すべきものであり,これに,貸金業者は,貸金業法の規定する各種の規制を理解してこれを遵守する法律上の義務を負っていること,借主はかかる点に関する知識に乏しく,証拠書類も保存していないことが一般であること,貸金業法は,貸金業者に対して一定範囲の取引経過の保管義務を課しており,貸金業者としてもかかる取引経過等を保管しているのが通常であることなどの実態をも併せ考慮すると,この点の主張立証責任の分配については,原告の側で,支払われた利息が制限利息を超えるものであることを主張立証すれば,当該支払にかかる利得及び損失について法律上の原因がないことが認められるのであり,みなし弁済規定の適用を基礎づける事実は,被告がこれを争うために主張立証すべき抗弁となるものと解するのが相当である。
なお,これと反対に,みなし弁済規定の適用がないことの主張立証責任を原告に負担させると,被告たる貸金業者側がみなし弁済規定の適用があることを主張し,かつ,17条書面又は18条書面の存在について一部の立証をしさえすれば,借主である原告が一般に立証手段を持たないことと相俟って「法律上の原因がないこと」について真偽不明となり,原告の請求を容れる余地がなくなることとなって,合理的とは思われない。
(3) 「悪意の受益者」に関する主張立証責任
次に,金銭消費貸借契約の借主から貸主に対して過払い金に利息を付しての返還を求める場合における「悪意の受益者」であることについての主張立証責任について検討する。
前記の金銭消費貸借契約の貸主が制限利息を超える約定利息を収受したことを原因とする不当利得返還請求権に関する主張立証責任の分配の考え方に,貸金業者が資金を高利で運用して利益を得ているとの経済活動の実態を併せ考慮すると,この点についても,原告側で,支払われた利息が制限利息を超えるものであることを被告が認識していたことを主張立証したときには,当該支払にかかる利得及び損失について,法律上の原因がないことについての被告の悪意が認められ,被告がこれを争うためには,例外的に,みなし弁済規定の適用があり,かつその認識があったことを抗弁として主張立証する必要があるものと解するのが相当である。
なお,これと反対に,みなし弁済規定の適用がないことを認識していたことの主張立証責任を原告に負担させると,被告たる貸金業者側がみなし弁済規定の適用があると認識していたことを主張しさえすれば,借主である原告が一般に立証手段を持たないことと相俟って「法律上の原因がないことについての悪意」について一律に真偽不明となり,原告の利息の請求を容れる余地がなくなることとなって,合理的とは思われない。
(4) みなし弁済の不成立と「悪意の受益者」との関係
ところで,貸金業者においてみなし弁済が成立すると認識していたにもかかわらず,結果としてみなし弁済規定の適用が認められなかった場合に,「悪意の受益者」となるか否かについては,その主張立証責任の分配の考え方と相俟って考え方が分かれるところではあるが,制限利息を超える約定利息の定めを一律に無効とする利息制限法の趣旨や,貸金業者に登録制度を実施し,業務の適正な運営を確保することで資金需要者等の利益の保護を図ることを目的とし,その目的に沿ってみなし弁済の要件を詳細に定めている貸金業法の趣旨,貸金業者が資金を高利で運用して利益を得ているという経済活動の実態,主観的認識の認定の困難性による法的判断の不安定化を回避すべき要請,制限利息を超える約定利息の収受に関する不当利得返還請求権に関する前記の主張立証責任の分配との統一性等を併せ考慮すると,この点については,法の不知は恕さずとの法諺に従い,被告がみなし弁済規定の適用を主張したものの立証ができず,又は主張した事実が貸金業法43条の要件を満たしていないなどの理由によってみなし弁済の規定の適用が認められなかった場合には,そもそも,例外的に法律上の原因があることを基礎づける事実があることを認識していたとはいえないというべきであって,この抗弁を認める余地はないものと解するのが相当である。
2 被告が「悪意の受益者」に該るか否か
(1) 以上を本件について見ると,本件各貸金契約の取引が制限利息を超えた約定利息によってなされていたことは当事者間に争いがないから,制限利息を超える約定利息の取得について法律上の原因がなかったことについて被告の悪意が認められる一方,被告は,本件貸金契約に際して,原告らに対して17条書面及び18条書面を交付していたことを主張するものの,提出された証拠はその一部にとどまっているから,みなし弁済の規定の適用があるか否かは真偽不明といわざるを得ない。
したがって,前記に判示したところにより,被告は「悪意の受益者」であるというべきである。
(2) なお,被告は,法人の「悪意」の認識の有無はその代表者を基準として判断すべきである旨主張するが,前記に判示したとおり,被告の側で,法律上の原因があること,すなわちみなし弁済規定の適用があることを基礎づける事実の認識があったことの主張立証責任を負うものと解する以上,前記判断を左右しない。
3 結論
以上を前提として,本件各貸金契約の取引経過について利息制限法にしたがって過払い金を計算すると,別紙のとおり,原告Aについての過払い金は150万1130円,これに対する未払利息は18万0434円となり,原告Bについての過払い金は35万8495円,これに対する未払利息は7698円となる(なお,残元本の額によって制限利率を変えて計算することの必要性については,最高裁昭和48年9月18日第三小法廷判決・訟月19巻13号210頁参照)。
よって,原告らの請求は主文の限度で理由があるからこれらを認容し,その余は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条但書に,仮執行宣言につき同法259条1項にしたがって,主文のとおり判決する。
過払い金 判例集 その3
第1 請求の趣旨
主文と同旨
第2 事案の概要
1 請求原因及び抗弁の各要旨
本件は,貸金業者である被告との間で,別紙「貸金計算書」(以下単に別表という)記載のとおりの金銭の借入・返済を重ねた原告が,これを利息制限法所定の利率で計算し,その超過支払分を元本に充当すると過払い金が生じているとして,不当利得を理由に民法703,704条に基づき当該過払い金の一部である82万6698円及び最終支払日の翌日からの法定利息の請求をしたのに対し,被告が,貸金業法43条の適用を主張して争っている事案である。
2 前提となる事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠(該当箇所に掲記)及び弁論の全趣旨によって認定することができ,この認定の妨げとなる証拠はない。
(1) 被告は,貸金業法3条所定の登録を受けた貸金業者である(乙2)。
(2) 原被告間の包括的基本取引
平成7年2月10日,原告と被告は,次のような金銭消費貸借基本契約(以下「本件基本契約」という)を締結した(乙9)。
取引極度額 600万円
利率 年365日の日割計算とし,利率は個別の借用書に明記する。
遅延損害金 年39.8パーセント
(3) 本件基本契約に基づく個別的金銭消費貸借契約
@ 平成7年2月10日,本件基本契約に基づき,被告は原告に対し,次のとおり業として名目350万円を貸し渡した(以下「第1貸付」という)。
貸付金額 350万円
ただし,事務手数料として10万5300円,印紙代として2400円,公正証書作成費用として1万6000円の総計12万3700円が差し引かれ,原告には337万6300円が交付された(甲4,乙1の1)。
返済金額 平成7年3月から平成16年11月まで毎月1日限り7万2100円,同年12月1日には5万1048円を支払う(甲1)。
利息 年21.9パーセント(年365日の日割計算)
遅延損害金 年39.8パーセント(年365日の日割計算)
返済方法 債権者の店頭への持参払い
なお,債権者が同意した場合は,送金又は訪問集金
特約 債務者が債務の支払いを遅滞したときは,当然に期限の利益を失い直ちに債務を完済しなければならない。
A 平成13年11月9日,本件基本契約に基づき,被告は原告に対し,次のとおり業として名目200万円を貸し渡した(以下「第2貸付」という)。
貸付金額 200万円
ただし,印紙代として2200円,公正証書作成費用として1万1000円が差し引かれ,原告には198万6800円が交付された(乙1の85)。
返済金額 平成16年11月3日に200万円を一括完済
平成13年12月から毎月3日限り利息を後払い(甲2,乙1の86ないし乙1の91)。
利息 年18パーセント(年365日の日割計算)
遅延損害金 年29.2パーセント(年365日の日割計算)
返済方法 債権者の店頭への持参払い
なお,債権者が同意した場合は,送金又は訪問集金
特約 債務者が債務の支払いを遅滞したときは,当然に期限の利益を失い直ちに債務を完済しなければならない。
(4) 原告は,被告に対し,別表入金日欄記載の日にちに入金金額欄記載の金額を返済した。
3 論点
第1貸付時における事務手数料等の引き去りをどのように評価するか。
第3 当裁判所の判断
1 みなし利息の天引と貸金業法43条
(1) 被告は,第1貸付時に,事務手数料として10万5300円,印紙代として2400円,公正証書作成費用として1万6000円の計12万3700円を差し引いている。
ところで,貸金業法43条2項3号は,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という)5条2項に違反する(利息)契約に基づく支払には貸金業法43条1項のみなし弁済規定を適用しないとしている。そして,出資法5条4項は,利息が天引された場合も,その利率が出資法5条2項の利率を超えるか否かを確認する旨規定し,同条6項は利息とみなされる金銭に対しても同様の検証をするよう要求している。
そこで,本件第1貸付時の事務手数料等の引き去りによるみなし利息の利率が,当時の出資法5条2項の規定する年40.004パーセントを超えるものであるか否かにつき検討する。
(2) 出資法5条6項は,金銭の貸付けを行う者がその貸付けに関し受ける金銭は,礼金,割引料,手数料,調査料その他何らの名義をもってするを問わず,利息とみなすとし,みなし利息につき利息制限法3条但書のような例外を設けていない。
そうすると,契約の締結及び債務の弁済の費用といえどもその例外としない趣旨であることは明らかであり(最高裁判所昭和57年12月21日決定・判例時報1065号191頁),第1貸付時のみなし利息は12万3700円ということになる。
また出資法5条4項は,利息を天引する方法による金銭の貸付けにあっては,その交付額を元本額として利息を計算すると規定する。
したがって元本額は337万6300円となる(3,500,000−123,700=3,376,300)。
では天引された12万3700円はどの期間に対応する利息となるのだろうか。
甲3の1の融資計算書(償還表)によれば,第1貸付の各回の返済方式は,元利均等払いで,残元本の利用期間に対応する利息を後払いし,残元本を逐次逓減させるというものである。
そうすると,第1貸付時に天引されたみなし利息は,第1貸付時の元本額の法定果実,すなわち第1貸付時から最初に弁済があった時までの元本の利用の対価ということになり,その期間は,平成7年2月11日(貸付日を算入しない合意が認められる−乙1の2)から同年3月1日までの19日間となる。
以上から,みなし利息の利率は,年70.38パーセントとなり(123,700÷19×365÷3,376,300≒0.70383),出資法5条2項に違反することは明らかである。
したがって,貸金業法43条の要件につき逐一検討するまでもなく,同条2項3号により,第1貸付に同条を適用することは許されないこととなる。
(3) 第1貸付につき貸金業法43条は適用されないので,利息制限法により計算すると,原告の返済金額の充当関係は別表記載のとおりとなるが,個々の金額の算出根拠につき若干説明する。
第1貸付は350万円全額につき成立する。第1貸付時のみなし利息は,利息制限法3条から10万5300円(印紙代及び公正証書作成費用を除く)となり,これを同法2条に従い計算すると,上記19日間の利息は2万6506円,残る7万8794円は貸付けと同時に元本の支払いに充てたものとみなされ,元本は342万1206円に減額される。
(3,500,000−105,300)×0.15×19÷365=26,506
105,300−26,506=78,794
3,500,000−78,794=3,421,206
また,第1回の支払日である平成7年3月1日に支払われた7万2100円については,すでにこの間の利息は支払われており,かつ当事者間で低額の繰上償還は禁止されていない(甲1の連帯借用証書第4条)ことから,全額が元本に充当されたと解される(民法491条)。
なお,平成8年及び同12年は閏年なので,当該暦年の利息は366日の日割計算とした。
(4) 被告は,第1貸付は7万2100円を毎月1日限り(平成9年1月は6日限り)支払うという約定であるところ,原告はこれを怠り平成9年1月7日に弁済したので期限の利益を失ったと主張する。そこで,この点につき判断する。
確かに,原告は,平成9年1月6日に支払うべき支払を怠っており(乙1の24),特約によれば期限の利益を喪失したことになる。
しかしながら,平成9年1月7日付けの領収書であるご利用明細書(乙1の24)には,次回支払日として平成9年2月3日との指定があり,かつ支払予定額の内訳として,遅延損害金ではな
く,利息と記載されている。また,これ以降の返済の際にもその都度同様の記載のある領収書が交付されていることが認められる。
これらの事実からすれば,被告は,いったん期限の利益を失った原告に対し,支払の都度期限の利益を付与していたものと解するのが相当である。
したがって,この点についての被告の主張も理由がない。
2 第2貸付について
同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を残元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払い金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務の利息及び元本に充当され(最高裁判所平成15年9月11日第一小法廷判決・裁判所時報1347号6頁)る。
これを本件についてみると,平成13年11月9日の第2貸付時には,原告は71万5483円が過払いとなっており,かつ,同日,被告から200万円を受け取り,192万8997円を返済していることが認められる。してみると,原告が被告から実質7万1003円を受領したとしても,全額が過払い金に充当されることになり,原告が過払い状態にあることに変わりはないこととなる。
3 被告の悪意について
原告は,民法704条に基づく一部請求として,原告が最終弁済した翌日である平成14年5月1日からの法定利息を請求しているものと理解される。
そこで,被告の悪意につき以下判断する。
民法704条の悪意とは,利得につき法律上の原因のないことを知っていたか重大な過失により知らなかったことである。
本件のような事例においては,貸金業法43条の適用がないことを知りながら,あるいは知らないことにつき重大な過失がありながら,利息制限法所定利率を超える利息の弁済を受けていた場合がこれに当たると解すべきである。
被告は長年にわたり貸金業を営み,かつ,貸金業法43条により利息を受領していた法人であることからすれば,貸金業の関連法規を熟知していたはずであり,高額なみなし利息を天引することによる法的効果を知っていたか,あるいは知らないことにつき重大な過失があったものと推認され,民法704条の悪意の受益者と認めるのが相当である。
4 結論
別表記載の個々の貸付及び返済の日付け,金額については当事者間に争いがなく,被告の貸業法43条に基づく主張については理由がない。
当事者間の個々の貸付及び返済を利息制限法所定の利率によって計算すると別表記載のとおりとなり,原告の請求を優に認めることができるので,主文のとおり判決する。
債権債務
原告は,Jから被告への本件債券の交付を主張して,平成12年4月,これを含む券面総額5億1735万円の無記名割引債券に関し,Jを相手方とする損害賠償ないし不当利得返還の請求訴訟を提起したが(b地方裁判所a支部平成12年(ワ)第120号),平成15年12月25日,Jから被告への本件債券の交付は認められないとして敗訴(その余の債券に関し一部勝訴)判決を言渡され,控訴した後の平成16年6月1日,Jとの間で,なんらの債権債務がないことを相互に確認する旨の裁判上の和解をした(c高等裁判所平成16年(ネ)第680号。 以上を一括して,以下別件民事訴訟(1)という。乙11の1ないし19)。 Gは,本件簿外資金は同社の資金であり,原告とS株式会社(旧商号・T株式会社)及びIがこれを横領した旨主張して,平成13年9月,上記各社とIの相続人らを相手方とする,総額7億8524万7474円の損害賠償請求訴訟を提起したが(b地方裁判所a支部平成13年(ワ)第325号。以下別件民事訴訟(2)という),上記訴訟当事者及び利害関係人のKは,平成16年6月1日,(a)Gと,原告,S及びKとの間,(b)GとIの相続人らとの間で,それぞれなんらの債権債務がないことを相互に確認する旨の裁判上の和解をした(乙12の1ないし14)。 関係預金口座の存在(ただし,下記以外の口座の権利者に争いがある)関係金融機関には,別紙口座目録記載の各名義の預金口座が存在していたが(以下同目録記載の番号で本件口座(1)などという),そのうち本件口座(4)は,原告を預金者とする原告の公表口座であった(上記目録掲記の書証,株式会社U銀行に対する調査嘱託の結果)。
みなし弁済と消滅時効
当初
ヘンディー
マニュファクチュア